物と共に歳月を重ねる、穏やかな生き方
私はますます日本のある生き方の理念に惹かれるようになった。

一本の包丁を一生使い続け、一把のハサミを一生使い続け、一つの保温マグカップを一生使い続け、一本の万年筆を一生使い続ける。車も、長い年月を共に過ごすことができる。

本当に良いものは、数多く必要ない。一つあれば十分だ。
本当に良い縁も、数多く必要ない。大切に値する人を一人、一生かけて愛し続ければ、それで十分だ。
時が経つにつれ、人には物語が宿り、物にも歳月の物語が刻まれる。

二十年使い続けた包丁には、家族の四季の食事が刻まれている。長年寄り添ってきた保温マグカップには、数え切れない朝と夕暮れが詰まっている。長年乗り続けた車には、これまでの歓び、別れ、再会が記録され、後部座席に誰が座り、助手席に誰が隣り、どこへ共に赴いたか、すべてが残されている。
後になってやっと分かった。本当に貴重なのは、物そのものではなく、歳月が命の痕跡をそれらに残してくれたことだ。

だから私は、時の試練に耐えられるものがますます好きになった。
頻繁に買い替える必要も、たくさん買い揃える必要もない。良いものを一つ選び、長年使い続け、自分と共にゆっくり年月を重ねていく。
食事も同じだ。

少なく食べても良い、ただし、心から美味しいものを食べる。毎食お腹いっぱいにする必要はなく、もう少し食べたいと思うくらいの状態こそ、最も心地よく幸せなのだ。
人生は、増え続けることを追い求める必要はない。残ったすべてのものを大切にし、寄り添ってくれる人を、一生忘れずに慈しむことこそ、本当の豊かさだ。